株式会社サンディアスでは、ドラマ・映画好き女性800人に、ドラマや映画作品に関わる行動についてアンケートを実施しました。
アンケートの結果では、対象女性のうち約85%が男性同士の恋愛を描く作品に抵抗がないことがわかりました。
特にBL(ボーイズラブ)作品は一般の視聴者には忌避される傾向にあるとの暗黙の認識がありましたが、今回の調査ではそれがまったくの杞憂であったことが明らかとなりました。
今回は、「ふだん、映画・ドラマをご覧になりますか」という質問に対して「見ない」と回答した方以外の800名がアンケートに参加。
さらにその結果をBL好きを対象としたアンケートの結果と比較分析しました。
◆調査概要
回答数:800
調査対象:映画・ドラマを視聴する女性
調査方法:インターネットリサーチ会社を利用したアンケート
調査期間:2022年4月26日〜27日
調査したサイト「ちるちる」は株式会社サンディアス運営のBLポータルサイトです。
https://www.chil-chil.net
アンケート回答者の年齢分布
今回「Z世代」と呼ばれる10代後半から60代まで、幅広い年齢層の女性がアンケートに参加。
まずは男性同士の恋愛を描く作品について質問しました。
■映画・ドラマ視聴者の女性の約85%が男性同士の恋愛を描く作品に抵抗がない。
Q.たまたま見た作品が男性同士の恋愛を描く作品だった場合、どういう理由があればその作品を見続けますか。
「どんな理由であれ男性同士の恋愛を描く作品は見ない」と回答をしたのは全体の15.6%にとどまりました。なにかしらのきっかけがあれば約85%の人が男性同士の恋愛を描く作品を見るという結果になりました。
つまり、ほとんどの女性が男性同士の恋愛を描く作品に抵抗がないことが判明しました。
Q.どういうきっかけがあれば男性同士の恋愛を描く作品を見たいと思いますか。
「内容がおもしろそうであれば見たいと思う」が全体の回答の72%ともっとも多く、次いで「好きな俳優が出ていれば見たいと思う」が45%となりました。
ちなみにこちらの問いでは「どんな理由であれ性同士の恋愛を描く作品は見ない」との答えた人は全体の12.9%でした。
以上の結果から、映画・ドラマを視聴する女性の85%前後の人が男性同士の恋愛を描く作品であっても、男女の恋愛を描く作品と同じように、気になれば抵抗なく視聴することがわかりました。
昨今、世界(特にアジア圏)ではBL(ボーイズラブ)作品の映像化が大きなブームとなっています。
にも関わらず、BL文化の発祥地である日本は、この分野でアジア諸国におくれをとっていると言わざるを得えません。
その背景には、業界の「BL」や「男性同士の恋愛」を描くことに対する忌避感や懸念が見え隠れしています。
また、たとえBL原作の実写化作品や男性同士の恋愛を描く映像作品であっても、意図的に「男性同士の恋愛」や「BL」といった表現が避けられ、「人間同士の心の交わり」などと持って回った表現が使用される場合が多く見受けられます。
しかし、今回の調査の結果からは、そうした「配慮」は特段必要なものではないということが明らかになりました。
事実、近年では「おっさんずラブ」を皮切りに、男性同士の恋愛を描く映像作品でヒット作が生まれつつあります。今後、日本でもこの分野でさらなるヒット作が生まれる素地はすでにできていると言って良いかもしれません。
■BLファンは好きな作品に対する消費欲求が高い
今回の調査では、映画・ドラマを見る女性800名へのアンケートとは別に、自社が運営するBLレビューサイト「ちるちる」のユーザー439名を対象に同じアンケートを行いました(2022年4月28日~5月4日実施)。
BLファンと一般女性へのアンケート結果を比較することで、BL好きにみられる独特の消費行動の実態があきらかになりました。
ここでは映画・ドラマを見る女性800名を「ドラマファン」、ちるちるで行ったアンケートの回答者を「BLコアファン」と表記します。
Q.作品の関連イベントが開催される場合、どんな内容のイベントなら参加したいと思いますか。
全回答のうち「イベントには参加しない」と答えた人の割合を比べてみると、ドラマファンが51%であるのに対して、BLコアファンはわずか26%となりました。
BLコアファンの多くがイベントに参加することがわかります。
ちなみに、詳しい内訳は以下の通り。
Q.これまで同じ映画を最高何回まで映画館に見に行ったことがありますか。
ドラマファンのうち「5回~7回」と答えた人が全体の2%であるのに対して、BLコアファンでは全体7%に。
「10回~19回」と回答した人も、ドラマファンの1.1%に対して、BLコアファンでは4%存在していました。
ここでも、ドラマファンに比べBLコアファンは、1つの映画を何回も映画館に見に行くことという結果になりました。
Q. 映画やドラマのDVD・Blu-ray等を買うきっかけは何ですか。2つまで選んでください。
まず、ドラマファンのうち「すでに鑑賞済みの作品のDVD・Blu-ray等は買わない」と答えたのは全体の47.9%。約半数がどんな特典がついていてもDVD・Blu-ray等は買わないことがわかります。
一方、BLコアファンでは、「すでに鑑賞済みの作品のDVD・Blu-ray等は買わない」と答えたのは全体の27%で、73%の人がなんらかのきっかけがあればDVD・Blu-ray等を購入することがわかりました。
詳しい結果は以下の通り。
DVD・Blu-ray等を買うきっかけは、ドラマファンもBLコアファンも変わらないようです。
全体を通して、BLコアファンの消費欲求の高さがうかがえます。
この事実は過去の調査からも明らかです。
2021年5月に「ちるちる」内で行った別のアンケートでは、BL好きはBLコンテンツに対して年間平均で162,266円を費やしていることが明らかになりました。
またBL以外の漫画やアニメ、2.5次元舞台などのコンテンツも合わせると、その消費は年間平均232,569円にものぼりました。
■映像BL作品のカギはBLコアファン層の消費行動と「布教欲」
ただ、いくらBLコアファンの消費欲が高いとはいえ、ドラマや映画作品の場合、もっと広い層に向けた作品を制作しなければならないと考えるのが通常の心理ではないでしょうか。
しかし、それでもBLコアファン層にむけて制作をしたほうがよい理由があります。
BLドラマのヒットの仕方はほかのジャンルの作品に比べて顕著な特徴があるからです。
BL系ドラマの独特なヒットの仕方
2018年に放映されたドラマ「おっさんずラブ」を例に見てみます。
一時社会現象とも呼ばれたヒット作ですが、放送当時の平均視聴率は3.9%。
2016年のヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の平均視聴率14.6%、2018年放送の話題ドラマ「アンナチュラル」の10.5%に比べると、圧倒的に低い数値です。
しかし、DVD・Blurayの初週売り上げをみると、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の5.7万枚、ドラマ「アンナチュラル」の1.1万枚に対して、ドラマ「おっさんずラブ」は3.9万枚を記録しました。
視聴率を考えると、この数字が驚異的なものであることがわかります。
この現象には、「おっさんずラブ」をきっかけにBLコアファンと同じ消費行動をとるようになったドラマファンが生まれたという背景がありました。
これまでBLコンテンツに触れることがなかった層が、ドラマ化によりBL的作品に出会い、一気にBLコアファンに転じたのです。
そうしたファンの性質は「おっさんずラブ」関連のグッズ展開の多さを見てもわかります。
このような行動は世界規模のヒットを生み出している「タイBLドラマ」や「中華ブロマンスドラマ」のファンの間でも見られています。
また、BLコアファンの特徴として見逃せないものにSNSでの拡散力があげられます。
Q.おもしろいドラマや映画があればほかの人におすすめしますか。したことがあることをすべて選んでください。
ドラマファンのうち「おもしろいと思ってもほかの人にその作品について話すことはない」と答えたのは全体の24%でしたが、BLコアファンでは全体の13%で、87%の人がなんらかの形で作品をおすすめすることがわかりました。
特に「SNSで感想を投稿したり、内容を紹介」したことがある人は、ドラマファンでは全体の13.6%であるのに対して、BLコアファンでは51%にのぼりました。
詳しい内訳は以下の通り。
BLドラマファンの間には、専用アカウントやハッシュタグなどを利用した独特のファンコミュニティが存在し、コミュニティの団結によってSNSで一気に作品が拡散されるといった現象がたびたび起こります。
局地的な人気であっても、熱狂的なBLコアファンを獲得することで、広く拡散され長期的な人気を得ることができるのです。
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