新型コロナウイルスによりステイホームが求められた2020年。家で過ごす時間が増えたことから、これを機に紙書籍から電子書籍に切り替えたという人も多いと思います。

腐女子マーケティング研究所では、商業BLレビューサイト「ちるちる」にて2021年5月に「商業BL購入の電子と紙の割合についてのアンケート調査」を実施。
今回は、腐女子ユーザー917人のアンケート結果をもとに、腐女子の作品購入傾向を分析し、BLとその他のジャンルのコミックをどのように購入しているのかという点にも着目しました。

10~20代は紙派、30代以上は電子派

蔵書が増えてくる30代以上では置き場所を取らない電子が優勢に

Q.BLは電子で買いますか?

全年齢の結果では「ほぼ電子」で購入するという人の割合は35.8%となっています。しかし、年代別で見ると、20代前半と30代以降で大きな違いが見られるという興味深い結果となりました。
以下は24歳以下の回答になります。

Q.BLは電子で買いますか?【24歳以下の回答】

若年世代へのアンケートでは「ほぼ紙」が43%を占め、「ほぼ電子」を20%も上回る結果に。
紙書籍購入の決め手としては「表紙や紙の質感を楽しみたい」「本棚に並べたい」「表紙」という意見が多かったことから、BL本を部屋のインテリアの一部としてディスプレイするといった若年層ユーザーの楽しみ方が想像できます。

ここで対比として見ていただきたいのが、40~44歳の回答。

Q.BLは電子で買いますか?【40~44歳以下の回答】

半数近くの47.6%が「ほぼ電子」という結果となり、2番目に多い「7~8割電子」の回答も合わせると、回答者の7割の人が電子派であることがわかりました。
BL歴が長くなればなるほど蔵書が増え、場所を取る紙書籍の置き場に悩んだり、家族にバレずに楽しみたいというユーザーが多いのではないかと推測できます。

続いて、全年齢へのアンケートから、電子・紙それぞれの購入の決め手を探ってみましょう。

Q.電子書籍購入の決め手は?

スペースを取らないことはもちろん、紙ではできない試し読みは電子の最大の強みとも言えます。
また、電子には作品の販売数に制限がないため、売り切れる心配もありません。ただ一つデメリットとしては、紙よりも発売日が遅い場合があることが挙げられます。
では、紙書籍の購入の決め手は何なのでしょうか。

Q.紙書籍購入の決め手は?

紙の購入時についてくる特典ペーパーやイラストカードが購入の大きな決め手に。
また、電子のほうで一番回答が多かった「スペースを取らない」とは対照的に、「本棚に並べたい」という回答が多いことからは、先述の通り部屋のディスプレイとして紙書籍を購入している人が多いことがうかがえます。

BL以外のコミック作品では紙派が多数

10代~30代までは紙派が多数、もしくは電子派と拮抗する結果に

Q.BL以外のコミックは電子で買いますか?

BL以外のコミックでは、「ほぼ紙」が42%を占め電子を上回りました。
グラフの項目の順番からも、BLと比べると紙派が多いことがわかります。
年代別では、こちらは30代以上のユーザーでも紙派が多くみられました。

1巻で完結することの多いBLとは違い、シリーズ化がほとんどの少年漫画や少女漫画。全巻揃えて本棚に並べたいというニーズに加え、家族や友達とも回し読みしやすいという点も大きいのではないでしょうか。

BL購入の決め手は「試し読み」が主流に

電子需要の高まりとともに、表紙買いの機会は少なくなったか

Q.BL購入パターンで重要視するものは?

BL購入にあたり多くの腐女子が重視しているのは「作家買い」という結果となりましたが、それに次いで「試し読み」「あらすじ」「レビュー」が上位にランクインしています。

「試し読み」が上位となり「表紙で選ぶ」が下位となっている背景には、ここ10年ほどの電子需要の高まりが大きく影響しているのではないでしょうか。スマートフォンや電子書籍サイトの台頭により、書店で表紙買いをするというよりも、じっくり試し読みをしてから購入するという購入パターンが一般化したものと思われます。

とはいえ、「表紙を重要視しますか?」という設問に寄せられた回答からは、現在でも表紙が一定の判断の基準となっていることが伺えます。

Q.表紙は重要視しますか?

特に、紙購入がメインの若年層では、やはり「コレクションとしての価値」という側面から表紙を吟味しているユーザーも多い印象です。ストーリーや設定に加え、表紙デザインやイラストのテイストも重要なファクターとなっているのではないでしょうか。

電子は「エロ多め」、紙は「ストーリー系」

電子と紙で購入作品のテイストの違いが顕著に

他の人に表紙や中身を知られずにひっそりと楽しむことができる電子書籍ですが、電子書籍と紙書籍で購入する作品のテイストに違いはあるのでしょうか。

Q.電子ではどんなテイストの作品を購入しますか?

今回のアンケートの結果では、電子書籍で購入する作品は「エロ多め」のものが最も多いという結果となりました。
エロ多めの作品は表紙もセンシティブなものが多く、実店舗でレジに持っていくことに抵抗を覚える場合も少なくありません。しかし、電子であればそうした心配をする必要がなく、紙書籍のように家族や友人に見つかる心配もないため、エロシーンの多い作品を購入しやすいと言えるでしょう。

それでは、紙書籍ではどのようなテイストの作品が選ばれているのでしょうか。

Q.紙ではどんなテイストの作品を購入しますか?

1位となったストーリー系作品の場合は、手軽さよりも「没入感」が重視されていると推測できます。「実際に手に取って世界観に浸りたい」というニーズには紙書籍が適しており、電子と紙で購入する作品のテイストが異なる興味深い結果となりました。

同じ作品を電子と紙の両方で購入したことがある人は6割

電子ストアの台頭で作品の買い方のバリエーションが増えた

ここまでのアンケート結果を見てみると、電子オンリー・紙オンリーというユーザーよりも、状況や作品のテイストによって使い分けているユーザーが多数派であることが伺えます。
次のアンケートの結果からは、電子と紙で両方買いする人も増えていることも見えてきました。

Q.同じ作品を紙と電子両方で購入することはありますか?

「よくある」「たまにある」と答えた人が62.1%と半数以上を占める結果になっています。
上位の回答理由としては、「好きな作家の作品だったから」「特典が紙と電子で違ったから」「作品が面白かったから」という点が挙げられます。やはり、店舗別などの特典がBL購入の大きな決め手となっていることが伺えます。

単話読みの人気の高まりの裏でWeb雑誌の需要は減

Web雑誌を購読する人は1割。好きな作品・作家に集中か

電子書籍サイトの需要増加に伴い、電子オンリーで販売するBL誌やBL作品も増えています。
これまでの慣習どおり1作品20~30Pの分量を数作品まとめてWeb雑誌として発売するスタイルに加え、20~30Pを単独で発売する単話売りのスタイルが一般化し、現在はこの2パターンがWeb連載の主流となっています。アンケートの結果を参照してみると、その購読状況は大きく分かれました。

Q.WebBL誌を購読していますか?

Q.電子の単話売りを購読していますか?

同じ電子作品でも、数作品がまとめて読めるWebBL誌よりも、作品別の単話売りが圧倒的人気でした。
購読の理由としては、「好きな先生の作品だから購入した」「すでに単行本化されている続編の連載だから購入した」という人が70%以上を占め、好きな作家の作品をピンポイントに追いかけるというニーズの高まりが感じられる結果となりました。

Q.ストア以外の無料アプリでBLを読む人はどのアプリを使っていますか?

単話連載作品は主に電子書籍ストアで購入が可能ですが、こうした単話作品を無料で読むことができるアプリも増えています。電子書籍ストア以外の無料アプリでBLを「たまによむ」「よむ」と回答した人は75.7%に上りました。

まとめ

昨今の電子書籍サイトの広告露出などからその需要の高まりを大いに感じますが、年代別で見ると、20代前半はまだまだ紙派が多いことが分かりました。
とはいえ、電子のみでの販売や漫画アプリが急増していることから、これからさらに電子派が増加していくことが予想されます。また、「単話読み」の人気からも、かつて主流だった漫画雑誌の役割が問われる時代となりました。
電子書籍・紙書籍にはそれぞれにメリット・デメリットがあり、今回のアンケートでは自分に合った使い分けをしている腐女子ユーザーの実態を掴めたのではないでしょうか。

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