2020年は実写化BLの年といっても過言ではないほど、BL作品のドラマ化、映画化が度々話題となりました。また、ジャニーズや話題の若手俳優の出演が話題を呼び、今まで以上にBL作品への関心が高まってきています。

腐女子マーケティング研究所では、2021年7月に商業BLレビューサイト「ちるちる」にて「漫画の実写化作品に関するアンケート調査」を実施。今回は、腐女子ユーザー1,252人のアンケート結果をもとに、BLの実写化作品に何が求められているのかを解析していきたいと思います。

BLの実写化作品を見る腐女子は5割

満足度の高さでは『チェリまほ』が圧倒的人気。キャスティングがドンピシャの声多数

Q.BLの実写化作品を見ますか?

約半数のユーザーがBLの実写化を見ていることが分かりました。
2010年代までの実写化BL作品に関しては、普段メディア露出が少ない舞台俳優の出演が多かったですが、近年はメディア露出も多い若年層に人気の若手俳優の起用が話題を呼んでいます。
そのためか、年齢層別に見ると20代前半までは実写化に賛成意見が上回るのですが、30代後半からは反対派が多数を占めていました。

これまで数々のBLコミックが実写化されてきましたが、実写化として満足度が高かった作品はなんだったのでしょうか。

Q.満足度の高かった実写化BL作品は?

地上波で2020年の秋クールに放送された『チェリまほ』こと『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』が堂々の1位に。Twitterとpixivコミックで大人気の同作品は、実写化発表・キャスティング発表ともにSNS上で盛り上がっていました。

では、上で選ばれた作品はどの点で満足度が高かったのでしょうか。

Q.上で答えた作品はどこが良いと感じましたか?

BLの実写化にあたり腐女子が重視しているのはキャスティングという結果となりました。
満足度1位の『チェリまほ』に関して言えば、劇団EXILEに所属の町田啓太さん扮する黒沢が、原作に引けを取らないイケメンっぷりで既存ファン&新規ファンともに魅了していました。また、同ドラマに関しては、ドラマオリジナルの要素が良かったというコメントも見られました。
下記は、ユーザーのコメントを抜粋したものです。

「ドラマオリジナル要素もストーリーに必要な要素だったり恋愛しないという立場の人の肯定が行われていたり、意味深いものだった」
「BLの括りに拘泥せず真摯に《人間》同士の恋として描いた点がとても良かった」
「役者さんの芝居が原作のキャラの解釈に近かった」

また、満足度ランキングの他の作品を見ると、濃厚な絡みシーンまでしっかりと演じられていた『窮鼠はチーズの夢を見る』『ポルノグラファー』『性の劇薬』がすべて5位内にランクイン。こちらは役を演じられた俳優の演技力や映像の美しさが評価されていました。

「役者の本気」
「作品の世界観を壊していなかった」
「登場人物の感情を繊細に表現していた」

ただ、ランキングで無視できない点は、選択肢の中には「満足度が高かった作品はなかった」という回答も多いことです。
まず実写化作品を見ていない人も多いとは思いますが、原作愛が強いファンの多いBL作品の実写化は、なかなか支持を得ることが難しいのかもしれません。

コミック実写化のカギは「原作の再現度」にあり

BLに限らない実写化作品を見るユーザーは約6割。『何食べ』はなぜヒットした?

続いて、BLに限らない漫画全般の実写化作品はどのくらい見られているのか見ていきましょう。

Q.原作を知っている漫画の実写化作品を見ますか?

BL作品の実写化と比較すると、「見る」と答えた回答者は微増しました。
今回の調査では、原作のファンか否かによって実写化作品の見方は大きく異なるという点から、「原作を知っている」と条件づけています。キャスティングのマッチング具合やストーリーの差異など、ファンならではの目の付け所から、腐女子が実写化作品に求めるものをより深く探ってみましょう。

Q.満足度の高かった非BL作品は?

西島秀俊さん・内野聖陽さんの豪華なW主演で実写化された『きのう何食べた?』が他と大差をつけて1位に。次いで大人気少年漫画『銀魂』『るろうに剣心』が同率2位にランクインしました。

では、選ばれた理由を見てみましょう。

Q.上で答えた作品はどこが良いと感じましたか?

やはりBL作品同様、キャスティングが良かったという声が多いです。原作のキャラクターのイメージにどこまで近づけるかは実写化にあたり非常に重要な要素であり、イメージが合わないと、キャスティング発表の時点で関心が薄れてしまいます。

同棲するゲイカップルの「食生活」をテーマにした『きのう何食べた?』は、キャスティングはもちろんのこと、原作に忠実であった点が高く評価されていました。

「細部までこだわっており、スタッフの作品への愛を感じた」
「ほぼ原作通りで、原作の世界を壊さないところが、制作陣に好感が持てた」

先ほどご紹介した『チェリまほ』に関してはドラマオリジナルの要素も評価されていましたが、やはりコミックの実写化にあたり原作の再現度は非常に重要なファクターとなっていると推測されます。そして、原作を忠実に再現するためには、キャラクターのビジュアルや雰囲気に合ったキャスティングが外せないでしょう。

BLの実写化に対してはマイナス意見が半数を超える

2次元を3次元の世界観で見ることに抵抗ある声が多数

近年増えているBLの実写化ですが、BL好きの腐女子には賛成派が多いのか、それとも反対派が多いのでしょうか。

Q.BLの実写化に賛成ですか、反対ですか?

反対と賛成でそこまでの大差はないものの、反対の声が多く上がる結果となりました。では、反対派の中にはどのような意見が見られるのでしょうか。

Q.上で反対と答えた方はどのような理由から反対されますか?

最も多かったのは「作品の世界観を壊されたくない」という回答で、回答全体の33.6%を占めました。実写化にあたりオリジナル要素が加わることをよく思っていないユーザーは多く、先述の通り、まず求められるのは原作の忠実な再現です。少しでも原作と異なるストーリー運びにしてしまうと、作品の解釈がマッチしなくなり、原作ファンとしては納得のいかない内容になってしまうケースが多く見られます。

こちらの項目には多くのコメントも寄せられ、BLというジャンルの特性もありますが、2次元を3次元にすることに抵抗がある人が多いことが分かりました。

「演出に限界があるので必ず原作から外れていく」
「二次元は二次元のまま楽しみたい」
「三次元になると嘘っぽく感じることが多いから」

原作が2次元であるからこそ、「あくまで2次元のファンタジーだからこそ良い」という声も多くみられました。

また、上記の設問でBL実写化に賛成と回答したユーザーには、実写化してほしいBL/非BL作品を聞いてみました。452件の回答の中から、実写化希望の声が多かった作品TOP5をご紹介します。

実写化してほしいBL / ニアBL作品TOP5

BLアワード2021コミックス部門1位に輝いた『オールドファッションカップケーキ』がこちらの調査でも1位となりました。こちらは会社の上司と部下の日常を描いた作品ですが、先述の『きのう何食べた?』にも通じる柔らかく癒される雰囲気が多くの腐女子の印象に残ったのではないでしょうか。

次いで2位にランクインしたのが、イケメン俳優同士の恋を描いた芸能BLコミック『25時、赤坂で』。芸能界が舞台ということで実写化しやすいのではないかといったコメントも見られました。

そして3位には極道の世界が舞台の『囀る鳥は羽ばたかない』がランクイン。劇場アニメ化もされた同作品ですが、日本ならではの任侠映画として観たいという声もありました。

非BL作品では、中学3年生の岡聡実と39歳のヤクザ・成田狂児の友情を描いた『カラオケ行こ!』が5位にランクイン。作者である和山やま先生の『夢中さ、君に。』は実写ドラマ化され、現在連載中の『女の園の星』にも実写化希望の声がありました。

原作にいかに忠実であるかが支持されるカギ

キャストには原作のイメージに合っているか、作品には原作にいかに忠実で世界観を壊さないかが求められる

タイBLや中華BLブームに続き、国内でもこれからさらにBLの実写化が増えることが予想されますが、実写化の成功にはキャスティングが最重要であることが分かりました。
では、主演キャストにはどういったことが求められているのでしょうか。

Q.実写化するにあたり、主演するキャストにはどのようなことを重視しますか?

4割強の人が「原作のイメージと合っている」ことを最重視していることが分かりました。演技力はもちろんのことながら、2次元、またBLの実写化にあたってはビジュアルの良さも重要であることも結果からわかります。
ただ、演技力がありビジュアルが良くても、原作のイメージと合わなければ、少なくとも原作ファンには刺さりません。原作をいかに理解して役を演じられるかが大きなカギとなるのではないでしょうか。

「原作の世界観もありつつ、実写化ならではのリアリティのある萌えを提供していただけたら嬉しい」

こちらは「実写化に求めるものは何か?」という設問に寄せられたコメントの抜粋です。同設問には1,000件を超えるコメントが集まりましたが、やはり最も多かったのは「原作に忠実、原作の世界観を壊さない」というものでした。

まとめ

アンケートを通し、二次元作品の実写化においては役を演じるキャストや制作陣がいかに原作を理解して作品を作り上げていくかという点が非常に重要であることが明らかになったのではないかと思います。
BL作品の実写化においても、原作に忠実なキャスティングを行い、作品の世界観や雰囲気を壊さずに映像化することができれば、三次元ならではの萌えを生み出すことができると言えそうです。
一方で、実写化自体に否定的な意見も少なくありませんでした。アンケートでは「それぞれのイメージや想いがあるので無理やり実写化しなくてもよい」というコメントも見られたことから、腐女子が作品のイメージを非常に大切にしているということが推測されます。

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